余りにも軽いサザン

去年末の紅白のレビューと言うか批評をやろうやろうと思いながら、1月ももう半ばを過ぎてしまいましたが、時事ネタを先に、ということで。

 この度、2014年12月に横浜アリーナにて行われた、サザンオールスターズ年越ライブ2014「ひつじだよ!全員集合!」の一部内容について、お詫びとご説明を申し上げます。

このライブに関しましては、メンバー、スタッフ一同一丸となって、お客様に満足していただける最高のエンタテインメントを作り上げるべく、全力を尽くしてまいりました。そして、その中に、世の中に起きている様々な問題を憂慮し、平和を願う純粋な気持ちを込めました。また昨年秋、桑田佳祐が、紫綬褒章を賜るという栄誉に浴することができましたことから、ファンの方々に多数お集まりいただけるライブの場をお借りして、紫綬褒章をお披露目させていただき、いつも応援して下さっている皆様への感謝の気持ちをお伝えする場面も作らせていただきました。その際、感謝の表現方法に充分な配慮が足りず、ジョークを織り込み、紫綬褒章の取り扱いにも不備があった為、不快な思いをされた方もいらっしゃいました。深く反省すると共に、ここに謹んでお詫び申し上げます。


サザン桑田、ライブ演出で謝罪文発表「深く反省すると共に、謹んでお詫び申し上げます」 (スポーツ報知) - Yahoo!ニュース

 うーん、ちょっと軽いなあと思いますが、私が気になったのは、桑田佳祐がロッカーなのかどうか、そもそもロッカー/ロックとは何なんですかということでした。

サザンオールスターズがバンドとしては戦後史でも一番成功したグループだとは言えるでしょう。最初に好みの問題で言っておけば私は正直言ってサザンにはあまり興味がありません。

悪ふざけが甚だしいか、そうでなければメロー過ぎて、もっとハードロック寄りだった KUWATA BAND の方がサウンドは好みです。

サザンのサウンドはロックじゃないでしょうという気持ちもあるのですが、いわゆる体制批判、大勢に迎合しないという、ライフスタイルとしてのロックの視点で見ても、ニューミュージック/フォーク/Jポップというくくりで見ても、サザンの活動は際立って歌謡曲寄りでしたよね。

シンガーソングライターがテレビに出ないと言う流れは吉田拓郎が新人の時にテレビ局にいけずをされてから、というのが契機らしいんですが、要はマーケティングからテレビを除外する、従来のアンダーグラウンド勢力に関与させない、地方の文化会館などでツアーを行う仕組みを作る、フォーライフレコード系のアーティストの始めた試みこそが、反体制と言う意味ではロック、だったのであって、芸能界はやくざが牛耳っていたので(あるいは現在形でしょうか)、体制と反体制の立ち位置が逆になっているんですね。

その意味では、サザンは従来型の芸能界に近接した形で出て来たバンドであって、芸能界的な売り方をされたコミックバンドでした。

1970年代の末頃は、新人アイドルの不作期が続いていて、オリコンでもニューミュージック&フォーク系が売り上げ上位を占める、いわばここで一端、歌謡界は終わっているんです。80年代アイドルは継承したのではなくて、焼け跡から新たなる伽藍を作り上げたんです。

歌謡界の終焉は、90年代初頭と見られていますが、セールス的には80年代においてさえニューミュージック系が圧倒的で、その時代に、うまくニューミュージック系に衣替えすることに成功したのがサザンなんです。

70年代末は歌謡界の圧倒的劣勢でしたから、従来型の芸能事務所は新たな素材、新たな売り方を模索していて、ニューミュージックがはやってるんならニューミュージックとアイドルを融合させましょうということで、アイドルがフォークを歌ったのが桜田淳子で、ニューミュージック系の歌手でアイドルになったのが竹内まりやであるわけです。

サザンはそういうアイドル的な売られ方をしたグループで、系統で言えばチェッカーズとかJUN SKYWALKER(S)とか、リンドバーグとか、ZARDとか、あの系統の初めの方にいる人たちです。

平凡とか、明星に出ていた人たちですよ。

同時期、同じく芸能界寄り、歌謡曲寄りで売り出されたのがゴダイゴや、ツイストですね。ゴダイゴは音楽性が高くて、ツイストはもっとロック寄りで、そう言う意味ではサザンはベストテンとかに出ても納まりが良かったですね。

サザンが芸能界システムの中で消費しつくされずに、ニューミュージック路線に転換できたのは、いろいろ考え方もありましょうが私が思うに、第一に湘南サウンド(ロックと言うよりはそれ以前のオールディーズですね)をベースにした環境音楽としての消費のされ方を構築したことと、第二にはっぴいえんどの日本語ロック革命を越える形で、子音的に歌詞を発音すると言う発明を、桑田佳祐が行って、テクニカルに革命の最前線に出たことがあろうかと思います。

まあともあれ、守旧的な芸能界システムの中から出てきて、音楽消費のストライクゾーンを担ってきたサザンのリスナーが保守的でないはずがないんです。

最近の世論調査では自民党の支持率は6割くらいいっているらしいんですが、サザンのリスナーはそれより自民党支持率が高くても全然驚かないですね。

つまり桑田佳祐は自分の支持層と、パフォーマンスで乖離を起こしたと言うことなんじゃないかなと思います、今回の騒動は。

まあ人はそれを老いと言うのかも知れません。